デマで買いだめをしてしまう問題

2020年2月下旬
「マスクや消毒液の次はトイレットペーパーやティッシュペーパーが品薄になる。製造元である中国で生産がストップしているようだ。ストックしておいたほうがよい」という情報がSNS上で発信され拡散された。 翌朝店頭にはトイレットペーパを求める人の行列ができ、あっというまに品切れになった。 製紙会社や小売店側は「在庫は十分にある。デマに惑わされず、落ち着いて行動してほしい」と呼び掛けたが、しばらくの間売り切れ状態が続き、行列に並ぶ人の中には「デマ」とわかっていても必要以上に購入する人もいた。

考察ポイント
  • 「デマ」拡散はどういったメカニズムで起き、その時どんな心理が働いたか考える
  • デマの拡散は「デマを流す人」⇒「デマを信じる人」⇒「デマを拡散する人」の流れで成立すると考えそれぞれの視点で仮説を立て考察する

仮説(みんなの意見)

デマを流す人の心理
  • 他人より優位な立場になりたい
  • 「マウント」「自己承認欲求」「自己顕示」
  • 正義感 ⇒ 自分が正しいと思っている
  • 愉快犯
  • 利益を目的としている ⇒ 転売目的
「自分と他者との関係」に関わる  「社会心理学」
デマを信じる人の心理
  • デマを信じる人は正しい情報を得られていないのでは?
  • 詳しくない人は騙される
  • 情報の入手経路には、政府、自治体、TV(ワイドショー、ニュース)、新聞、ネット(掲示板、Twitter、Yahoo知恵袋、インスタ、Yahooヘッドライン、youtube)、家族・親戚、友達などさまざま。信頼性のある政府・自治体の情報は見ずにネットの情報だけをみるのはなぜだろう
  • ネットの情報は受け身で入ってくるから
  • 関心がないと自分から調べようとはしない
「人がどう認識し,理解し,行動するか」に関わる  「認知心理学」
デマを拡散する人の心理
  • 周囲の人間の多数派意見への同調 ➡︎ 同調圧力
  • 人間関係による不安、恐怖、圧力
  • 目新しいことが人々の注意を引き、他人に伝えたくなる

いい調子じゃ。
次はデマ拡散のメカニズムを心理学と脳科学から学んでみよう。

学ぶ・考える

デマ拡散のメカニズム

デマを流す

承認欲求により他人から注目を集めたい

「承認欲求」とは、「他者から認められたい」という欲求です。

「他者に注目されたい」「自分のツイートをみてもらいたい」
SNS上でデマを流し「いいね」や「リツイート」をしてもらいたい。という心理が働いたと考えられます。 SNSの普及で、他者から認めてもらう対象が自分の周りからネット上に移ってきていることで 対象の顔が見えないことで気軽に発信できてしまうことも、SNS上でデマが流れやすいと考えられます。

デマを信じる


デマを信じる過程には、脳の働きと心理的要素が絡み合っています。

脳の働き

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図:メンバーが自作

意思決定に関わるこころと脳のはたらきは、感情的・直感的な「直感型」と理性的・統制的な「熟慮型」の二重過程になっています。

●「直感型」は判断を必要としたとき、自動的に働き、努力を必要とせず、論理性よりも直感で動く。
●「熟慮型」は起動が遅く、意識的に努力しないと起動しない。起動にはエネルギーを使うのでなかなか動かない。

正常時は二つの過程を経て判断するが、普段と違う状況の場合「直感型」が動き「熟慮型」が働きにくくなる ため正しい判断ができなくなるといえます。

連想活性化

「連想活性化」とは、何かを判断するとき、自分に都合のよい考えを勝手に推測したり、つくり出したりし、 自分が「信じていること」「言っていること」は正しいという結論を導きだそうとします。 そのため、手元にある情報だけを信じ、手元に無いものは無視することで、自分の都合のよい考え方をします。

自分が見たものが全てという思い込み

何か決断をするときに、情報がありすぎると判断が難しくなります。 判断したり考えることはとてもエネルギーが必要で面倒なため、 論理性や客観的に判断することをせず、経験やすぐにわかることだけで結論を導きだそうとします。
コロナ禍では慣れない生活のストレスでエネルギーを使っています。 そのような状況でさらにエネルギーを使って何かを判断するのは非常に面倒なため、エネルギーを使わない方法で判断したと考えられます。

確証バイアス

「確証バイアス」とは、何か考えや信じることを説明するときに、それに賛成する情報ばかりを集め、 反対する情報を無視したり集めようとしない傾向のことをいいます。 また、その結果として、稀に起こる確率を過大評価しがちであることも知られています。

コロナ禍のデマが正しいか正しくないかを判断するときに、「連想活性化」や「過去の経験」から、判断したことが正しいものと信じたいために 自分の都合のよい情報ばかりを集め、デマであるという情報を無視して「デマを信じる」と判断したと考えられます。

デマを拡散

新奇性仮説

目新しいこと、珍しい情報が人々の注意を引き「これ知ってるよ」と他人に伝えたくなる、という仮説です。 特に「知らないと損をする」類の情報の場合に、拡散力が上がると言われています。
コロナ禍では、実際にマスクが不足していた状況から、みんなに早く知らせて役に立ちたいという心理が働いたと考えられます。

同調圧力

「同調圧力」とは、集団の中で、多数の人が支持するの意見が歓迎され、少数意見を持つ人に対して、意見に反論したり個人攻撃で意見を言えない状態となることです。

緊急時に集団の中で「みんなのため」になる行動を取ろうとします。デマを信じる人が多数派の場合、みんなと異なる少数派の意見は軽蔑されるかもという恐怖からその場の空気を読んだと考えられます。

デマに惑わされるのはこういうことだったのか。
まとめてみるとこんな感じになるのかな・・・。

ここまでのまとめ
  • デマは他者に認められたいという「承認欲求」を満たすために流される
  • 普段と違う状況のとき、正常な判断をするための脳の働きが鈍くなるため、自分の都合のよい情報だけを信じたい心理が働く
  • 普段と違う状況のとき、同調圧力によりデマと分かっていても否定することができない環境が出来ることで拡散が広がる

そうじゃ!
では、実際にコロナ禍ではどんな気持ち・考えになったか考えてみるのじゃ。

コロナ禍での心の動き

図:メンバーが自作
図:メンバーが自作

普段なら正しく判断できることが非常事態になると正しく判断できなくなってしまうことが分かりました。 そして、人が何か判断するときに心の動きだけでなく脳の働きも大きく関係していることを学びました。 では、非常時でも普段通りの考え方をするために私たちが今できることは何か考えます。